築年数ごとの行うべき屋根修理・メンテナンス工事
屋根修理は一度行えば終わりではなく、数年周期でのメンテナンスが必要となります。
瓦は非常に寿命の長い屋根材ですが、瓦以外の屋根材は寿命がおよそ30〜40年といわれていますが、仮に寿命が30年だと想定した場合、屋根にかけるトータルコストは安くてもおよそ150万円程度、高い場合は300万円を超えるケースもあります。
しかし、いくら修理が必要と言われても、それほどの高額な費用はかんたんに支払うことができません。
だからこそ、将来を見越して屋根にかけるトータルコストを事前に計算し把握しておくことが重要なのです。
築10年経過以降のメンテナンス時期について
屋根はおそよ10年〜15年に一度の周期で修繕・メンテナンスが推奨されています。
しかし、「新築から何年経過したか」によって行うべきメンテナンスは異なります。
行うべき工事は住まいを取り巻く環境などによっても異なりますが、10年ごとの行うべきメンテナンスの目安は以下の通りです。
新築〜10年:屋根塗装(約40〜60万円)
10年〜20年:屋根塗装・カバー工法(約60〜100万円)
20年〜30年:カバー工法・屋根葺き替え(約80〜200万円)
新築から10年までは、屋根塗装によってメンテナンスを行うのが一般的です。
この時点では屋根材はまだそこまで劣化が進んでいないため、修繕ではなく屋根塗装を行うことで屋根材を保護する塗膜を甦らせることで、屋根材の劣化を防ぐことを優先します。
10年〜20年では、屋根材に劣化が進行しているケースがあり、状態がひどくなければ屋根塗装を行います。
屋根材にスレート(カラーベスト・コロニアル)を採用している場合、他の屋根材より劣化が進行している場合が多く、状態が悪い場合にはカバー工法で屋根全体をメンテナンスします。
新築から20年以上、特に30年経過している場合、瓦以外の屋根材は何かしら劣化が起こっているので、カバー工法や屋根葺き替えなど屋根の全体的な修繕工事で屋根自体を新しくします。
瓦屋根の場合、表面的には劣化が行なっていなくても屋根材の下のルーフィングは劣化しているケースが多いので、屋根葺き直しなどでルーフィング・屋根下地のメンテナンスを行うのがおすすめです。
そもそもどうして屋根修理は高額なの?
住まいを守り、長く快適に暮らしていくために必要な屋根修理ですが、その費用は決して安くありません。
定期的にしっかりメンテナンスをしたいとお考えの方であっても、費用が高額なために工事の実施を躊躇される方も多いかと思います。
そもそもどうして屋根修理は高額なのかについてですが、主な要因は2つあります。
まず要因の一つ目ですが、屋根工事には必須となる足場にかかる費用です。
足場は、高所作業をする職人の安全を守るために絶対に必要な設備です。
この足場にかかる費用ですが、工事面積や使用する足場の種類によって費用が変動してきます。
費用相場は約20万円からと高額ですが、足場は職人の安全確保や住宅周辺の安全確保のために必要不可欠です。
そのため、費用を節約したいと思っても、どんな小規模な工事であっても足場が必要となり費用がかかるため、屋根工事は高額になりがちなのです。
もう一つの要因は、屋根修理の工事範囲です。
屋根材の差し替えなど部分的な工事以外では、屋根を一部修理するだけでは全体の耐久性は改善されません。
そのため、屋根の状態を改善するためには全体の工事が必要となります。
上述の足場費用に加え、屋根の面積が広いため工事範囲も広くなり、それに伴って工事費用も高くなるのです。
また、屋根葺き替えを行う際には雨樋の交換も必要になる場合があります。
屋根葺き替えによって屋根の厚さが変わると、屋根の高さが変化して雨樋が正しく機能しなくなる可能性があります。
このような場合には、屋根葺き替えと同時に雨樋交換する必要となり、その分工事費用も増加します。
大掛かりな屋根修理にかかる費用相場について
それでは、高額な費用出費となる大掛かりな屋根修理にかかる費用相場について、各工法ごとに見ていきましょう。
同じ工法であっても、既存の屋根材に何が採用されているか、新しく何の屋根材を採用するかで費用は大きく変わるため、費用相場には振り幅が大きいです。
各種屋根材の特徴については、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてぜひご覧ください。
代表的な5つの屋根材について徹底解説!屋根修理の成功は屋根材選びから
屋根葺き替え
屋根葺き替え工事は、既存の古い屋根をすべて撤去して、新しい屋根材を載せる工法です。
工事の際には屋根材だけでなく、野地板(のじいた)と呼ばれる下地や防水シートも交換されます。
各種屋根工事の中で、屋根葺き替えは最も費用が高額になりますが、屋根の機能を新築の状態に戻すだけでなく、新たに機能的な屋根材を採用することも可能です。
費用相場は、一般的な日本瓦であれば約100万円〜200万円、それ以外のスレート屋根などでは約80万円〜150万円となっています。
また、2004年以前に建築されたスレート屋根の場合、屋根材にアスベストが含まれている場合があります。
このアスベストは撤去・処分費用が高額になるため、もしアスベストが含まれている屋根に葺き替え工事を行う場合は費用がさらに高額になることがあります。
屋根葺き直し
瓦屋根の修理では、屋根葺き替えではなく屋根葺き直しという工事も非常に有効なメンテナンスとなります。
瓦はしっかりメンテナンスさえ行なっていれば、寿命は100年以上という非常に耐久性の高い屋根材なのです。
ただし、それはあくまで屋根材である瓦に限った話で、下地やルーフィングの耐用年数は長くても30年ほどです。
そこで、既存の瓦を処分せず再利用して下地やルーフィングだけを交換し、再び瓦を載せる屋根葺き直しを行うことで、瓦の処分費用を抑えることができるわけです。
屋根葺き直しの費用は100万円から180万円となっています。
寿命が長い瓦屋根でしか採用できない工法ですが、屋根葺き替えと比べて費用を抑えることができる上、既存の雰囲気を壊さずに下地を一新できるため、日本瓦の屋根にはおすすめの工法です。
カバー工法(屋根重ね葺き・重ね張り)
カバー工法は、屋根重ね葺きとも屋根重ね張りとも呼ばれ、既存の屋根の上に新しい屋根を重ねて設置する工法を指します。
屋根材の種類によって費用は異なりますが、おおよその相場は約60〜100万円となっています。
カバー工法は、屋根材表面は劣化しているものの、下地や防水シートには劣化が見られない場合におすすめのメンテナンスです。
ただし、施工後は屋根が二重構造となるため、屋根全体の重量が増してしまう点には注意が必要です。
建物の耐震性を確保するために、新しい屋根材に瓦が選ばれることはありませんし、軽量な金属屋根(ガルバリウム鋼板)が選ばれるケースがほとんどです。
瓦屋根に採用されることがない工法ですが、現在はスレート屋根の平らな屋根が住宅の主流となっています。
スレート屋根はカバー工法を採用しやすい屋根ですので、近年では屋根メンテナンスといえばカバー工法といわれる程人気の工事です。
屋根塗装
屋根塗装は、塗膜によって屋根材の劣化を防ぐという重要な役割があります。
塗膜は紫外線によって経年と共に劣化するため、定期的に塗装を行うことで屋根材を保護する防水層を維持し、雨風や紫外線から屋根材を守っているのです。
工事費用は屋根面積によって変動しますが、どのグレードの塗料を使うのかによっても大きく変動します。
平均相場はおよそ40万円〜60万円で、遮熱塗料などの機能性塗料を採用するとさらに費用が高額になるので、ご予算と要望のバランスを調整しながら適切な塗料を選びましょう。
雨漏り修理
雨漏り修理には、雨漏りの原因を突き止めるために事前調査が必要です。
初回問い合わせ時の無料点検で原因箇所がわかれば問題ありませんが、本格的な調査が必要になった場合には以下のような費用が発生します。
発光液調査:10万~20万円
赤外線サーモグラフィ―調査:15万~25万円
雨漏り修理は、コーキングの打ち直しなど5万円程度で済む場合もありますが、屋根全体の修繕が必要な場合は屋根葺き替えやカバー工法を行うことになります。
そうなると、最低でも60万円からの工事となり、高額な出費となります。
症状の程度によって行うべき修繕工事が大きく異なるのが雨漏り修理ですが、いずれの場合でもなるべく初期段階で修理することで費用を抑えることができます。
その意味でも、雨漏りに早く気づくための定期的な点検・診断、そしてそもそも雨漏りを発生させないための定期的なメンテナンスが重要になってくるでしょう。
屋根修理・雨漏り修理には火災保険が活用できる場合も
どうしても高額になりがちな屋根修理・雨漏り修理ですが、被害が自然災害による場合には火災保険が活用できる場合もがあります。
火災保険と聞くと火災に対する補償だけのようにも感じますが、風災・雹災・雪災といった自然災害による被害にも対応しています。
最終的に保険適用となるかどうかの判断は保険会社ですので、「確実に活用できる」とは断言できませんが、火災・風災・雹災・雪災による被害の場合は適用となる可能性が高いので、ぜひ保険を活用してください。
ただし、浸水などの水災はオプション扱いになっている火災保険が多いので、一度ご自身が加入している火災保険の補償内容はどうなっているのかを確認しておくのがおすすめです。
火災保険を活用するための条件や注意点はこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
屋根修理・雨漏り修理で火災保険を活用するための条件や注意点を徹底解説